コラム
映画男はつらいよ備忘録十選vol.1 「第1作から第5作」(改訂版)
2017年05月08日
2017年 5月 9日 映画男はつらいよ備忘録十選vol.1 「第1作から第5作」(改訂版)
私は、今年(平成29年)3月下旬、東北大学病院に1ヶ月程入院することになった。
点滴生活のお慰みは、日刊スポーツ、小説、テレビである。
本年4月から毎週土曜日午後6時30分よりBSジャパンで「やっぱり土曜は寅さん」のタイトルで
「映画″男はつらいよ″シリーズ」を第1作から放映しており入院中に第5作まで見ることになった。
「映画″男はつらいよ″」は全部で特別篇も含め49作まであるとのことであるが、
見たものもあるし見ていないものもある。見ていても忘却の彼方である。
ならばこの際全篇見ようと思いたった。
と同時に見た後冥土の土産に備忘録をまとめて見ようという気になった。
5作ずつまとめればちょうど10篇の備忘録が出来上がる。
名付けて「映画男はつらいよ備忘録十選」である。
Vol.1は「第1作から第5作」である。
一 「映画男はつらいよ」には、日本の元風景が、そして失なわれた昭和の暮らしがある。
また昭和の俳優、女優が、主役、脇役を問わず出演しており、懐かしさを禁じ得ない。
みんな、若く、みずみずしい。
基本的なキャスト、スタッフは、以下の通りである。
寅さん(車寅次郎)ー渥美清、さくら(諏訪さくら)ー倍賞千恵子、博(諏訪博)ー前田吟、
おいちゃん(車竜造)ー森川信・村山達雄・下條正巳、おばちゃん(車つね)ー三崎千恵子、
のぼる(川又登)ー秋野太作、御前様ー笠智衆、朝日印刷タコ社長(桂海太郎)ー太宰久雄、
源公ー佐藤蛾次郎。満男ー吉岡秀隆。
原作・監督・脚本ー山田洋次(一部、監督ー森崎東、小林俊一)。
音楽ー山本直純。
ニ 名セリフ(常套句)
1 結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りは糞だらけ。
2 上等上等、上等じゃないか。
3 それを言っちゃおしまいよ。
4 相変わらず馬鹿か?
5 労働者諸君!
6 おいちゃん、店じまいするか?
7 今夜は、この辺でお開きっていうことにするか?
8 お前、さては(さしずめ)インテリだな!
9 見上げたもをだよ屋根屋のふんどし、大したもんだよ蛙の小便、てか。
10 四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立ち小便、てか。
三 各論
1 第1作ー「男はつらいよ」1969年(昭和44年)8月。私は15歳で中学3年生。
口上ー「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使いました。根っからの江戸っ子。
姓名の儀は車寅次郎、人呼んで、フーテンの寅と発します。」
ロケ地は、京都、奈良、天橋立。
マドンナは、御前様のお嬢様冬子で幼なじみの光本幸子。
さくらと博が結婚、披露宴に博の父親として名優志村喬(しぶい)がゲストで登場。
2 第2作ー「続・男はつらいよ」1969年11月。
口上ー「天に軌道がある如く人それぞれに運命あり。
私ことフーテンの寅、望郷の念やみがたく、再び帰ってまいりました。」
ロケ地は、京都、奈良、三重県伊賀市柘植(つげ)。
マドンナは、葛飾商業の恩師坪内先生の娘夏子の佐藤オリエ。
その坪内先生が初代黄門様のゲスト東野英次郎(しぶい)。彼氏が山崎努(若い)。
さくらの長男満男が産まれる。寅さんの瞼の母お菊が、ミヤコ蝶々(うまい)。
3 第3作ー「男はつらいよ・フーテンの寅」1970年(昭和45年)1月。
口上ー「さあてお立ち合い!春だねお立ち合い!この寅さんに縁談が舞い込んだ!
帝釈天のご利益とガマ油の効き目だね!お立ち合い!」
ロケ地は、三重県湯の山温泉。 寅さん、駒子(春川ますみ)と見合い、温泉旅館で番頭。
マドンナは、旅館の女将志津の新珠三千代(美しい)。芸者の香山美子(若い)と彼氏の河原崎建三。
4 第4作ー「新・男はつらいよ」1970年2月。
口上ー「春は桜、男は寅さん!ブラリ、ブラリ北から南!セッタの鼻緒が切れるまで、大爆笑を売りまくる。」
ロケ地は、愛知県豊明市。 中京競馬場で大穴を当て、タクシーで葛飾柴又へ帰還する。
おいちゃんとおばちゃんをハワイに連れて行こうとするが、手配を頼んだ旅行代理店に勤めていたのぼるが
旅行代金を社長に持ち逃げされハワイ旅行はおじゃん。
とらやに入った泥棒は、財津一郎。
マドンナは、幼稚園の先生でとらやの2階に下宿する春子の栗原小巻(綺麗)。
出奔した父親の親友がゲストの名傍役三島雅夫。彼氏が横内正。
5 第5作ー「男つらいよ・望郷篇」1970年(昭和45年)8月。私16歳高校1年生。
口上ー「水の流れと人の世は・・・。惚れたと一言いっておくんなさい。ホラ、江戸川も泣いてらあ。」
ロケ地は、北海道札幌・小樽と千葉県浦安。 昔世話になったテキ屋の親分を見舞いに札幌に行く。
そのまだ見ぬ息子が、国鉄の蒸気機関車の罐焚きのゲスト松山省二。その説得に失敗し、労働に目覚め、
浦安で豆腐屋稼業。
マドンナは、浦安の豆腐屋の娘で美容師節子の長山藍子。
母親が、ゲストの杉山ひさ子で、彼氏は、国鉄勤務のゲスト井川比佐志。
この二人は、「テレビ男はつらいよ」の博とおばちゃん役。
本当は、本シリーズはこの篇で終わりの予定だったが、あまりの人気に続篇を作成することになったよし。
四 あらすじ編
まずは、第1作の前振りです。
「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております。
思い 起こせば20年前つまらねえことでおやじと大喧嘩、頭を血の出るほどぶん殴られてそのままプイっと家(うち)をおん出て、
もう一生帰らねえ覚悟でおり ましたものの、花の咲く頃になると決まって思い出すのは、故郷のこと、
ガキの時分ハナタレ仲間を相手に暴れ回った水元公園や江戸川の土手や帝釈様の境内のことでございました。
風の便りにふた親も秀才の兄貴も死んじまって、 今、たった一人の妹だけが生きてることは知っておりましたが、
どうしても帰る 気になれず、今日の今日までこうしてこうしてごぶさたに打ち過ぎてしまいました。
今、江戸川の土手に立って生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がぽっぽと火照ってくるような気がいたします。
そうです。私の生まれ故郷と申しますのは葛飾の柴又でございます。」
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、
名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」
1 第1作ー「男はつらいよ」1969年(昭和44年)8月。
寅さんが20年ぶりに、故郷柴又に帰ってくる。歓迎ムードも束の間、寅は妹さくらの縁談をぶちこわし、また旅の人となる。
奈良で旅行中の御前様とその娘・坪 内冬子(光本幸子)と再会。幼なじみゆえ、
気さくな冬子に恋をした寅さんは、帰郷してからも冬子のもとへ日参する。
一方、裏の印刷工場につとめる諏訪博は、さくらへ想いを寄せていた・・・。
フジテレビ版の結末に抗議が殺到したこともあり、寅さんをもう一度、ということで
山田洋次監督自ら企画。ワイドスクリーンいっぱいに、元気溌剌な寅のハ チャメチャぶりが爆笑を誘う。
マドンナは新派のトップ女優で、これが映画初出演の光本幸子。博の父には名優・志村喬。
2 第2作ー「続・男はつらいよ」1969年11月。
一年ぶりに帰郷した寅さんは、葛飾商業の恩師・坪内散歩(東野英治郎)と、
その娘・夏子(佐藤オリエ)と懐かしい再会を果す。酒を酌み交わしたものの、
寅さんは胃けいれんを起こし入院してしまう。しかし寅さんは病院を抜け出し、
無銭飲食をして警察沙汰となり、さくらは心を痛める。
故郷を後にした寅さんは、京都で夏子らと偶然再会し、散歩先生の薦めで、
“瞼の母”に会いに行くが…。
散歩先生とその娘をめぐるエピソードの暖かさ、瞼の母に感動の再会と思 いきや、実は…という悲喜こもごも。
爆笑のなかに、ミヤコ蝶々演じる、寅さんの産みの母・お菊が、重ねて来た苦労が偲ばれる細やかな監督の演出など、
みどころタップリ。
3 第3作ー「男はつらいよ・フーテンの寅」1970年(昭和45年)1月。
柴又に帰って来た寅さんを待ち受けていたのは、見合い話だった。
相手は川千屋の仲居・駒子(春川ますみ)。彼女は寅さんの昔なじみで、亭主持ちということで、大騒動に。
それから暫くして、竜造とつね夫婦が、三重県の湯の山温泉へ旅行に行くと、なんと旅館で寅さんが番頭をしていた。
旅館の美人女将・志津(新珠三千代)に 一目惚れして、居着いてしまったという・・・。
『なつかしい風来坊』(66年)など山田洋次作品の脚本を手がけた森崎東監督による第三作。
旅先の寅さんの姿が、活き活きと描かれている。
宴会で余興を頼まれた寅さんが、又旅姿で「旅笠道中」に併せて、マドンナの名前「お志津!」と叫ぶ。
寅さんの純情がストレートに伝わってくる。
香山美子扮する芸者と、その父で元テキヤの花沢徳衛をめぐるエピソードは、森崎作品ならではの味。
4 第4作ー「新・男はつらいよ」1970年2月。
競馬で大儲けした寅さんが、名古屋からタクシーで帰郷。
竜造とつねをハワイ旅 行に連れて行くことにするが、出発の朝、旅行会社が代金を持ち逃げしたことが判明。
メンツが大事な寅さんは、旅行に出かけたフリをして、おいちゃんたちと共に店で静かに潜む。
しかし、そこへ泥棒(財津一郎)が入って大騒動。
反省の旅に出た寅さんが、戻ってくると、二階には幼稚園の春子先生(栗原小巻)が下 宿していた…。
テレビ版を演出した小林俊一による第四作。寅さん流のおいちゃん孝行である
「ハワイ旅行」が仇となるエピソードの前半。財津一郎の泥棒のユーモラスなキャラクター。
そして後半は、美しき幼稚園の先生に、一目惚れしてしまう寅さんの行状など、明るい笑いに満ちた一編。
5 第5作ー「男つらいよ・望郷篇」1970年(昭和45年)8月。
義理ある正吉親分(木田三千雄)危篤の報をうけ、寅さんと登は札幌へ向かう。
息子に逢いたいと懇願する親分のために、寅さんは機関手の息子・石田澄雄(松山省二)を説得するが、拒まれてしまう。
親分の死により、浮草稼業に嫌気がさした寅さんは、一念発起、堅気を目指し、 裏の工場の労働者となる。
しかし長続きはせずに、たどり着いたのは浦安の豆腐店 「三七十屋(みなとや)」。
その一人娘・節子(長山藍子)に惚れた寅さんは、大ハリキリで、労働にいそしむが…。
山田洋次監督が『続・男はつらいよ』以来、久しぶりにメガホンをとった作品。
父子の確執のエピソード、蒸気機関車のダイナミックな描写など、前半の重厚なドラマが一転、
寅さんが労働者を目指す狂想曲への転調の楽しさ。
浦安の豆腐屋の杉山とく子、長山藍子、その恋人・井川比佐志は、
それぞれテレビ版でお ばちゃん、さくら、博(テレビでは博士)を演じている。
以上