コラム
法務コラム「居酒屋を無断キャンセル…法的問題は? 」
2021年11月19日
忘年会シーズンですね! これからしばらくの間、飲み会が続く方も多いでしょう。 中にはうっかりダブルブッキングしてしまい、泣く泣くキャンセル…なんて方なんかもいらっしゃるかもしれません。 居酒屋のキャンセルといえば、先日、警視庁が、居酒屋4店舗に虚偽の予約を入れた疑いで、被疑者を逮捕したとの報道がありました。 報道によれば、被疑者は都内の居酒屋1店舗に偽名で電話し、1万円のコース17名分の予約をしたにもかかわらず、 店側に何の連絡もなく来店しなかったという被疑事実のほか、同系列の4店舗に対しても、同様の予約を行い、無断キャンセルをしたとの報道がなされています (なお、被疑者は被疑事実を否認しているとのことです)。 この事例ほどではないにせよ、飲食業界では、このような無断キャンセル(実際にはキャンセルもしていないので、正確な言い方ではありません。 業界では「ノーショー(No show)」とよぶことが多いようです)が大きな問題になっているようです。 経済産業省の調べによると、飲食店の全体の予約の1%弱、年間でおよそ2000億円程度がこのようなノーショーによって代金を請求できないままになっているとのことです。 ここからは上記のようなノーショーの法的責任について検討します。 まず、刑事責任からですが、当初から実際に店を予約する意思がないにもかかわらず、虚偽の予約電話を入れた場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)に該当し、 3年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。 また、民事責任については、単なる席の確保にとどまらず、コース料理の注文があった場合には、店と利用者との間で契約が締結されていると考えることができますから、 店側から債務不履行による損害賠償請求(民法415条)が請求できる場合もあるでしょう。 また、契約が成立していない場合でも、不法行為(民法709条)によって損害賠償請求が認められる場合はあるかと思われます。 損害賠償の範囲は、ケースバイケースになりますが、一例としては、原材料費や仕込みのための手間賃、人件費、本来であれば得られるはずだった逸失利益などが認められる可能性があるものと思われます。 もっとも、金額が少額の場合、訴訟等の法的手段によって回収することが難しい場合が多いと思われますので、店側でどのような事前の対策がとれるか、というところがポイントになってきます。 前記経産省のレポートによれば、代表的な対策として 1.来店日前に予約確認の電話をする 2.キャンセルポリシーを設定し、キャンセル料を請求できるようにしておく 3.そもそも一見さんの予約を受けない 4.事前にクレジットカードや、口座の情報を聴取しておく といったところが挙げられるようです。 お店の規模によってどのような対策がとれるかは変わってくると思いますが、検討してみる価値はありそうです。 逆に、お客さん側の立場からみたときには、前記のとおり最初から行くつもりもないのに予約を入れた場合には犯罪となる可能性がありますし、 犯罪にはならなくとも所定のキャンセルフィーの請求を受けたり、場合によっては損害賠償請求を受けたりする可能性もあります。 くれぐれも、キャンセルについては、早めにお店に連絡するようにしましょう! それでは、楽しい忘年会ライフを! (弁護士 渡邊弘毅)
※この記事は2019年11月に当事務所メールマガジンにて配信した記事と同一です。