コラム
【法務コラム】裁判所の管轄について
2021年06月01日
裁判所は全国各地に存在し、地方裁判所だけでも本庁が50か所,支部が203か所あります。
それでは、裁判所に訴訟を起こしたり、調停の申し立てをしたりする場合、どの裁判所を使えばよいでしょうか。
その事件の「管轄」がどこの裁判所にあるかという点を考慮する必要があります。
基本的に訴訟を提起する場合には、相手方の住所地を管轄する裁判所に提起が必要になります。
例えば、仙台市に在住する人を相手方として訴訟提起する場合には、仙台地方裁判所が管轄となります。
また、事案によっては、相手方の住所地以外を管轄とすることもできます。
例えば、不動産に関する訴えの場合には、その不動産の所在地を管轄する裁判所で訴訟提起することも可能となります。
一方、相手方として訴訟提起をされたけれども、自分の住所地を管轄する裁判所への申し立てではなかった場合や他の裁判所にすることがふさわしいと考える場合には、移送の申し立てをすることができます。
また、離婚や遺産分割協議等のために裁判所に調停を申し立てる場合にも、原則として相手方の住所地を管轄する裁判所への申し立てを必要とします。
この場合、例えば遠距離で別居中の夫婦が離婚のために調停を申し立てようとすると、相手方が積極的に調停を申し立ててくれないかぎり、相手方の住所地を管轄する裁判所へ申し立てをしなければなりません。
そうすると、もし申立側に金銭的な余裕がなく、しかも幼い子を育てているという状態であった場合には、遠方の裁判所への出廷のために費用や子の監護をどうするか等負担がとても大きなものになってしまいます。
そこで、前記のような負担を軽減させるための手段としては、裁判所に対して調停を申し立てるのと同時に、申立てをした裁判所(自庁)でこの事件を処理してください、という自庁処理の申し出をすることが考えられます。
もちろん、これらの申し立て、申し出は、理由がなければ認められませんし、個別の事情による場合もあります。
法律問題でお困りの際には、同時に裁判所を利用するための管轄についてもご相談いただければと思います。
以上
(弁護士 渡部真莉奈)