コラム
同一労働同一賃金の最高裁判決について(12/3セミナーのフォローコラム)
2021年01月21日
1 御礼
オンラインセミナーの12月3日の当事務所のオンラインセミナーでは、令和2年10月13日(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件)の最高裁判例の内容や企業対応のポイントを解説させて頂きました。多くの方にご参加頂き、ありがとうございました。
短時間のセミナーで駆け足になってしまいましたので、セミナーのフォローコラムを書いておきます。
2 最高裁判決の概要
大阪医科薬科大学事件では、アルバイト職員に対して賞与を支給していない点等が問題になりました。
最高裁は、賞与の性質が、「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る等の目的によるもの」と述べ、職務内容等に一定の相違があることも考慮した上で、賞与の不支給自体、不合理ではないと判断しました。
また、メトロコマース事件では、契約社員に対する退職金の不支給が問題となりました。
最高裁は、退職金の性質が、「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る等の目的から、様々な部署などで継続的に就労することが期待される正社員に対し支給することとした」と述べ、職務内容等に一定の相違があることを考慮した上で、退職金の不支給自体、不合理ではないと判断しました。
いずれも不支給を不合理ではないと判断しています。
しかし、どちらの最高裁判例も、「労働条件の相違が(賞与、退職金)の支給に係るものであったとしても」「不合理と認められるものに当たる場合はあり得る」と明示していますので、事案によっては、賞与・退職金の不支給が、不合理な待遇差であると判断され、各原審での判断と同じように一定の割合が示され(賞与について正社員の60%以上を支給すべき、退職金は正社員の4分の1以上を支払うべき等)、企業が損害賠償責任を負うことは考えられます。
企業としては、賞与・退職金に限らず、各種手当等の不支給が不合理と判断されるおそれがあることを考慮し、現在の待遇差の有無の確認、待遇差がある場合の理由の確認を行なうことが必要です。
3 適切な説明の重要性
また、その際、最も意識すべき点は、待遇差についての適切な説明です。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律14条2項は、事業主は、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときには、通常の労働者との間の待遇の相違および理由等について、説明義務を定めています。
紛争予防の観点からも、適切な説明内容等を文書にまとめて説明できるように整理しておくと良いと思います。
なお、不合理な待遇差と判断されそうな場合に、待遇差を解消するため一方的に正社員の手当を削減すると、労働条件の不利益変更となり、やはり労使協議が十分行なわれているかどうかが変更の有効性に影響することになります。
賞与・退職金・各種手当は、労働者の方達の生活に直結する重要な労働条件なので、企業としては、十分な説明・理解を求めるという方針で、対応をしていくことが重要と思います。
以上
(弁護士 浅倉稔雅)