コラム

【法務コラム】境界と建物の関係

2020年08月28日

民法234条には、建物を建てる場合は、境界線から50センチメートル離さなければならない、と定められています。
建物同士の間隔が狭いと、例えば火事の際に延焼しやすい等の問題があるためです。
お隣同士のトラブルを防いだり解決したりするための民法の規定(相隣関係と呼ばれています)のひとつです。
50センチメートルというのは、外壁から境界線の最短距離、というのが一般的な解釈です。
つまり屋根のひさしは含めないで計るものの、外壁の中で土台や出窓等張り出しているところがある場合は
そこから境界線までを計るということです。
これに違反して建築しようとすれば、隣地から建築中止を求められることがありますし、
計画の変更を求められることもあります。
既に建物が完成している場合であっても、損害賠償の請求が可能とされていますので、請求を受ける可能性があります。

地域によっては、建物が密集していて、お互いにこのルールが守られていない場合もあります。
この点、民法には、その地域に、民法のルールと違った慣習があれば、慣習が優先される、というルールがありますので、
50センチメートル以下でもよいという慣習があると言えれば、問題はありません。
ただ、慣習というのは、目に見えないものですから、慣習があると言えるかどうか、ということで争いになる場合もあります。
ですので、もし、これから自宅を建築する、という場合には、トラブル防止のため、234条のルールを守ること、
もし、土地の広さと希望する自宅建築プランとの関係で、どうしても50センチメートル空けられないという場合は、
隣地の方に事前に説明して、同意をいただいておくことをお勧めします。

なお、防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、
その外壁を隣地境界線に接して設けることができるという規定が、建築基準法65条に定められています。
この規定は、民法に優先するというのが一般的な考え方です。
したがいまして、これらの地域内に建築する場合は、条件を満たす建物であれば、
境界のぎりぎりまで建てても法的な問題はないことになります。

建てようとしている建物が、ご自宅の場合は、その後、その隣地の方と、お隣同士として生活していくことになります。
したがって、トラブルの種を残さない方がよいものと思いますので、法的なルールを守った上で、
お隣の方には事前にご挨拶や説明をしておく、ということが大事であるものと思います。


(弁護士 丸山水穂)

※この記事は当事務所のメールマガジン2019年5月号掲載の記事と同一の内容です。