コラム
【コラム】自己紹介(弁護士 翠川洋)
2018年07月29日
こんにちは、翠川です。
事務所HPの自己紹介には、趣味は「音楽」と書きましたが、本も大好きです。
そこで今回は、昨年ハマって全作品を読破したドナ・タートをご紹介します。
ドナ・タートは、1963年生まれのアメリカ・ミシシッピ州出身の女性作家です。
執筆に10年を費やした「黙約」で1992年に遅咲きのデビュー。
2作目は2002年の「ひそやかな復讐」。
3作目は2013年の「ゴールドフィンチ」。
10年に1作ペースの極めて寡作な小説家なので、3作読めば全作品読破!です。
日本での知名度は今ひとつかもしれませんが、世界規模では全作品がベストセラー。
タイム誌の「最も影響力のある100人」に選出されたこともあります。
最新作「ゴールドフィンチ」はハリウッドで映画化が進行中です。
日本でも、村上主義者(「ハルキスト」ともいいますね)の間では知られた存在でした。
「村上さんのところ」で「ゴールドフィンチ」がスパゲティ小説に認定されたからです。
スパゲティ小説?村上主義者にはおなじみの言葉ですよね。
「スパゲティを茹でている最中もつい手に取ってしまう小説」。
もちろん広辞苑には載っていません。
作品はいずれもミステリ仕立てで、ページをめくる手が止まりません。
しかも、骨太な物語、きっちり書き込まれた細部。
古典の風格さえ漂います。
ただし、3作ともかなりの長編です。
「ゴールドフィンチ」に至っては4分冊あります。
ハマったら何日か徹夜する覚悟が必要です。
ちなみに「ゴールドフィンチ」とは、ファブリティウスの「ごしきひわ」のことです。
たまたま母親とメトロポリタン美術館にいた13歳の少年が爆弾テロに巻き込まれます。
大混乱の中、この世界的名画を持ち出したことから、波瀾万丈の物語が始まります。
まさにスパゲティ小説!
「黙約」は、もともと「シークレット・ヒストリー」というタイトルで翻訳されました。
長らく絶版でしたが、昨年「黙約」と改題されて新潮文庫で復活。
解説は村上春樹です。
アン・パチェットがセレクトした「この75年間の75冊」のうちの1冊でもあります。
さらには、Amazonの「一生のうちに読むべき100冊」にも選ばれています。
面白さは折紙付きといっていいでしょう。
私の一番のお気に入りは「ひそやかな復讐」です。
12歳の少女が、兄を殺害した犯人を見つけ出して復讐しようと企てます。
彼女が引き起こす無鉄砲な騒動からも目が離せませんが、何より細部が圧巻です。
舞台はアメリカ南部の地方都市。
光景だけでなく空気まで感じさせる情景描写。
どこかユーモラスな登場人物たち。
濃くて暖かでありながらも閉塞感のある人間関係。
見え隠れする差別、貧困、疎外、暴力・・・。
読み終えるのが惜しくなるほど、小説を読む楽しみに満ちています。
残念ながら「ひそやかな復讐」は現在絶版状態です。
仙台市の図書館にも蔵書がありませんでした。
読むためには古書を探すか原書(”The Little Friend”)で読むしかありません。
とはいえ、次回作まではあと10年あります(笑)
ゆっくり探して下さい。
おっと、字数オーバーになりました。
機会があれば、アン・パチェットもご紹介したいと思います。
以上
(メールマガジン2018年1月号掲載と同一の内容です)