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【コラム】月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げと代替休暇制度の概要について(法改正)1

2023年02月27日

1 月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げ

⑴ 改正の概要

2023年(令和5年)4月1日以降、中小企業に対しても、「月60時間」を超える時間外労働の割増賃金率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます(労働基準法第37条)。この割増賃金率の引き上げは、長時間労働の抑制等のため、平成20年の労働基準法の改正により、大企業については既に適用されていました。しかし、時間外労働抑制のための業務処理体制の見直し等の速やかな対応が困難であり、経済的負担の大きさも考慮され、中小企業については猶予されていました(附則第138条)。しかし、その猶予措置がなくなることになります。

残業代請求事案をみていると、月60時間超の法定時間外労働がなされている事案は必ずしも多くない印象ですが、月によって該当する事案は一定数存在しており、企業としては、これまで以上に労働時間の把握と割増率に注意する必要があります。以下、通達(平成21年5月29日 基発第0529001号)を元に、ポイントをお伝えします。

⑵ 対象となる時間外労働

「月60時間」の「月」とは、暦による1か月のことであり、その起算日を労働基準法第89条第2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就業規則に記載する必要があるとされています。1か月の起算日については、毎月1日、賃金計算期間の初日等とすることが通常ですが、就業規則等において起算日を定めていない場合には、労使慣行等から別意に解されない限り、賃金計算期間の初日を起算日として取り扱うこととされています。

⑶ 休日労働との関係

「月60時間」に含まれるのは、通常の法定時間外労働であり、週1回又は4週間4休日の「法定休日」の労働(割増率35%の法定休日労働)の時間は含まれません。他方、法定休日以外の「所定休日」における労働は、それが法第32条から第32条の5まで又は第40条の労働時間を超えるものである場合には、「月60時間」の算定対象に含まれることになります。この点、算定を簡便にする観点から、就業規則等において、法定休日と所定休日を明確に区別しておくことが望ましいとされています。

⑷ 深夜労働との関係

月60時間を超過した時間外労働が、深夜(午後10時から午前5時の間)に行なわれた場合、「75%」(=時間外割増率50%+深夜の割増率25%)以上の割増率が必要となりますので(労働基準法施行規則第20条第1項)、より注意が必要です。

 

(弁護士 浅倉稔雅)

「月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げと代替休暇制度の概要について(法改正)2」に続く。
※2023年3月6日の公開を予定しています。