コラム

【法務コラム】国際離婚のキホン②

2020年07月06日

日本に住んでいる日本人と外国人の夫婦が離婚を考えているが、協議が成立しない場合どうなるかについても、やはり日本人同士の夫婦と手続は同じです。
つまり、まずは家庭裁判所で離婚調停を起こし、それでも成立しなければ離婚訴訟を起こす、というのが一般的な流れとなります。
夫婦の一方が日本に住んでいる日本人である場合は離婚については日本法による、という大変便利な規定がありますので(法の適用に関する通則法27条ただし書)、離婚調停も離婚訴訟も日本の民法その他が適用されるということになります。
わたくし自身、これまで扱ってきた国際離婚(弁護士の業界では「渉外離婚」と呼ぶことがあります)の案件はすべて日本人と外国人の夫婦のものでしたので、「渉外離婚」といったところで実際は日本人同士の離婚と同じでした。

 

ところが、いよいよ仙台にもインバウンドの波が押し寄せ、先日ベトナム人同士の夫婦の離婚の相談を受けました。
日本に住んでいるベトナム人同士の夫婦が日本の制度を使って離婚することは問題なくできます。
ただし問題は、いったいどこの国の法律が適用されるのか、本人たちの母国のベトナム法なのか、それとも手続をしている日本法なのか、です。
この場合、法の適用に関する通則法25条と27条本文により、夫婦の共通本国法であるベトナム法が適用されることになります。
日本で離婚手続をしようとしているにもかかわらず、です。
「ついに来たか」と身構えました。 ベトナム法がどうなっているかを調べなければなりません。
幸いなことにベトナム法に関してはJICAのホームページにかなりの分量の日本語訳があります。
インターネットで探せばベトナム法を英訳したものは数多くあります。 JICA訳の「ベトナム婚姻家族法」によると、どうやら裁判離婚のほか和解による離婚、さらに協議による離婚の規定もありますが、 夫婦で離婚に合意しても、裁判所が合意内容を検証して「公認」(英訳では「recognize」)するものとされています。

 

と、このくらいを調べたところで夫が帰国してしまい、結局相談だけで終わって受任には至りませんでした。
ちょっと残念な気もする一方でおおごとにならずに済んでよかったとも思います。
ところがいま別件で、バングラデシュの民法・家族法を調べています。
日本語訳などまったく見当たらず四苦八苦しているところです。

 

以上
(弁護士 長尾浩行)