コラム

【法務コラム】国際離婚のキホン①

2020年07月01日

日本人同士が結婚した場合でも、いろいろな事情で婚姻の解消、つまり離婚を考えざるを得なくなり、現実に離婚に向けた手続きを進めていくことはありえます。
そして離婚を進めるプロセスというのは双方ともに大変にストレスを感じるものでとにかく大変なものだというのは巷間言われているとおりだと思います。

さていわゆる国際結婚をした夫婦も、やはりいろいろな事情で離婚を考えざるを得ないということも当然にありえます。
生まれ育った文化習慣が異なる男女が結婚する国際結婚自体、なかなか大変そうだなあと感じられるところですが果たしてそのような夫婦の離婚、
いってみれば国際離婚とはいったいどのようなものになるでしょうか。
まずは、日本人と外国人の夫婦で、どちらも現在日本に住んでいる場合、日本国内での離婚の手続は、実は日本人同士の夫婦と同じです。
ということは、もし話合いがまとまれば役所にある「離婚届」に双方が署名押印して、成人2人の署名押印をしてもらってこれを役所に提出して、受理されると離婚が成立します。

もっともこの日本式の協議離婚の制度はあまり世界に例がないと言われています。
確かに、本人同士の話合いで離婚することを決めることができる協議離婚の制度そのものはめずらしくはありません。
お隣の韓国でも中国でも、あるいはベトナムでも協議により離婚をすることができる制度があります。
しかしながら、日本の制度が特徴的であるのは、本人同士が離婚に合意していても、例えば双方ともちょっと頭を冷やす期間を設けてはどうかとか、
子どもがいる場合は養育費や離婚後の面会などの取決めをちゃんとしているのかとかを第三者的な立場から、
例えば行政機関やあるいは裁判所などがチェックする仕組みがないことです。
韓国も中国もベトナムも、本人同士が離婚を合意しているとしても行政機関や裁判所に届出をした際に、「本当にこのまま離婚してもいいのか」をチェックする仕組みがあります。
離婚届を受け付けるのは区市町村の役場であり、それぞれの自治体ごとに扱いが異なるようなのですが、例えば夫婦の一方が韓国籍であったりすると、
母国の制度で必要とされる手続をクリアしているかどうかを確認されることもあるようです。

そのほかの国籍の場合はどうかというと、提出しようとする役場に相談してみるしかありません。
母国の制度がどうであれ、日本の役場に離婚届が受理されると、少なくとも日本法の手続上は離婚が成立します。

※この記事は当事務所メールマガジン2019年12月号で配信した内容と同一の内容です。
(弁護士 長尾浩行)