コラム

【法務コラム】被災者の二重ローン対策〜自然災害債務整理ガイドライン

2019年12月13日

去る10月に発生した台風19号は,宮城県内はもとより,東日本の広範囲にわたり,甚大な被害をもたらしました。
災害により,自宅や車,農機具などが被災してしまったにもかかわらず,ローンがそのまま残っており,生活再建がままならない…そのような被災者の方も少なくありません。

このような方を救済するために,「自然災害債務整理ガイドライン」(被災ローン減免制度)という制度があります。

この制度は,災害の影響により,以前から負っていたローンの返済が難しくなってしまった被災者の方について,一定の条件のもとに,ローンの減額や免除が認められる制度です。

この制度のメリットは大きく4つあります。
①ブラックリストにのらない
信用情報機関に事故情報として登録されない(いわゆるブラックリストにならない)ため,ローンの減免を受けたうえで,新たなローンを組むことが可能になります。

②手元に財産を残せる
手元に一定の財産(500万円を上限とする現預金,被災者生活再建支援金など)を残したままローンの減免を受けることができます。

③無料で弁護士の支援が受けられる
無料で弁護士の支援を受けながら手続きを進めることができます。

④保証人への請求が原則免除される
破産や民事再生などの手続をとると保証人に請求がされますが,この制度を利用しても原則として保証人へは請求されません。

この制度を利用するためには,まず,借入金額が一番多い金融機関に行き,この制度を利用することについての同意書(着手同意書)をもらう必要があります。
着手同意書をもらったら,お住まいの地域の弁護士会にて,支援してもらう弁護士を紹介してもらいます。
その後は,弁護士のサポートを受けながら手続を進めることになります。

「自然災害債務整理ガイドライン」は,災害の影響でローンの返済に悩んでいる被災者にとっては,大変メリットのある制度なのですが,残念ながら,あまり知れ渡っていないため,十分に利用されているとは言い難い状況にあります。
この制度は,新たなローンを組んでしまったり,あるいは家の修繕などを済ませてしまった後ですと,利用ができにくくなってしまいますので,1日でも早くご利用いただくことが重要です。

ローンの返済に悩んでいる被災者の方には,是非この制度の利用を検討していただきたいですし,お知り合いにローンの返済に悩んでいる被災者の方がおられましたら,是非この制度のことをお知らせいただきたいと思います。

(弁護士 小向俊和)